石版

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 しかし、そう思うと緑色の液体はすぐに消えていった。更に不思議なことに、近所の人からの苦情が来ない。 「ロ、ロア、こ、これはどういうことだ?」  神谷は未だに震えている。 「モンスターは普通の人には見えないんだ。泣き声も聞こえない。特殊な周波を発してるから。緑の液体が消えていったのも普通の人には見えないからだよ」  ロアは平然と答えた。  訳が分からない……神谷は心の中で、そう呟いた。  部屋の中に流れる長い沈黙――  神谷は静かに目を閉じた。目の前が真っ暗な闇に包み込まれる。  神谷はその闇に吸い込まれそうな錯覚に陥る。  深く、更に深く。  沈黙はまだ、流れているままだった。
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