4人が本棚に入れています
本棚に追加
「や、やあ、今日はどうしたんだい?」
木漏れ日が差す森の中、飛世慈親は驚きのあまり立ち尽くしていた。
つい数時間前、彼は山菜を採りにいつもの山に出かけたのだ。そこで、思わぬ遭遇を果たすこととなった。宝石の様な赤目で、輝かしい白金の長髪で、青白さを感じさせるほど白く、更に上等の着物を纏った親しげな人に。
数年前から彼の町には妙な噂が立っていた。『山には赤目の美しい妖怪がいる』――時代の流れに押され、七十五日と持たぬ間に人々の脳裏から消え去った小さな噂である。
赤目の妖怪とは、目の前のこれの事だろうか……。飛世は柔らかな笑みを己に向ける妖怪らしき者に視線をやる。細められた目は、噂と同じく、少し淡い紅を宿していた。
その後、誘われるがままに赤目の小屋に連れて行かれ、饅頭を御馳走になる事になった。
「どうぞ」
湯気の立ったお茶が湯呑みに注がれると共に、町の饅頭屋に売ってある饅頭を出された。赤目の手には、湯呑みがもう一つとお茶の入った薬缶が一つ。
最初のコメントを投稿しよう!