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とくとくと自分の湯呑みに注ぎながら座布団に座り、赤目が口を開く。
「で、今日はどうしたの?」
言いながら赤目がお茶を啜ったのを見て、飛世も一口啜る。
「今日は、とはどういうことだ?」
赤目から反応が返ってくるまでの間、ざっと部屋を見渡す。見た限りでは、地方の、少し裕福な家の一部屋である。
「君の事は随分前から知ってたよ。よく山菜を採りに来るからね」
飛世の様子を別段気にした風もなく、赤目は饅頭に手を伸ばした。
「客人より先に食うのか」
「仕方ないじゃないか、君が手を付けないんだし」
怪しまない方が不自然だろう――そう言いかけて飛世は口を噤んだ。なら何故付いて来たのだという話である。そんな事を言われれば、来てから悔んだ飛世には何も言い返せない。少し、苦い表情を見せた。
「ならいただこうか」
そう言ってからも、飛世は饅頭に手を出さない。呆れた様子の赤目が一口頬張り、飲み込んだのを見てからようやく手を伸ばした。
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