出会い

3/5
前へ
/21ページ
次へ
 とくとくと自分の湯呑みに注ぎながら座布団に座り、赤目が口を開く。 「で、今日はどうしたの?」  言いながら赤目がお茶を啜ったのを見て、飛世も一口啜る。 「今日は、とはどういうことだ?」  赤目から反応が返ってくるまでの間、ざっと部屋を見渡す。見た限りでは、地方の、少し裕福な家の一部屋である。 「君の事は随分前から知ってたよ。よく山菜を採りに来るからね」  飛世の様子を別段気にした風もなく、赤目は饅頭に手を伸ばした。 「客人より先に食うのか」 「仕方ないじゃないか、君が手を付けないんだし」  怪しまない方が不自然だろう――そう言いかけて飛世は口を噤んだ。なら何故付いて来たのだという話である。そんな事を言われれば、来てから悔んだ飛世には何も言い返せない。少し、苦い表情を見せた。 「ならいただこうか」  そう言ってからも、飛世は饅頭に手を出さない。呆れた様子の赤目が一口頬張り、飲み込んだのを見てからようやく手を伸ばした。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加