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「用心深いのかそうじゃないのか判らないな」
「一応用心はしているつもりさ」
言ってから大口を開けて饅頭を放り込む飛世。
「妖怪には効かない薬だったらどうするんだい?」
赤目は町で噂になっている事を知っているらしい。その事に小さな驚きを感じながら饅頭を腹に収めた。
「生憎、俺はよっぽどの事が無い限り見た事の無い物を信じない性質でな。妖怪なぞ信じんのだ」
「毒も見えないよ?」
赤目の言葉に、若干不機嫌そうな表情を見せる。慌てて、赤目は口を開いた。
「もし、っていうのは考えないの?」
「俺は聡い方だ。表情を見れば大体の事は分かるさ」
「じゃあ僕の微笑みに付いて来たんだ」
「まあ……な」
表情というよりは、噂通りの容姿に付いて来てしまったのだが、本人の前で言うのは少々はばかられる。
「俺は薬の扱いには慣れている。指先が動かせれば大丈夫だ」
少し誇らしげに飛世は言った。
「へえ、家業は?」
「薬屋だ」
「……薬屋?」
「普通の、だ」
「普通の毒薬かい?」
「俺がそんな風に見えるのか?」
「見える」
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