4人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………」
「冗談だよ」
くすくすと、赤目は今日二度目の笑顔を溢した。
不思議と赤目の正体を問いただす気にはなれなかった。親しげに話しながらも、どこか距離を置いた雰囲気を醸していたからかもしれない。
「そこを真っ直ぐ行けば道に出るよ」
「すまないな」
「謝る事はないさ」
何度目かの微笑みを見せて、赤目は一歩前へ出た。
「そうか」
「また会ったら、また来てね」
「会えばな」
そう言ってから鬱蒼とした茂みの中に身を入れて、飛世は山道へと向かった。ちらと振り返れば、赤目が腕を小さく振っていた。それを見て飛世は微笑みを浮かべた。
――また会ったら、今度は薬の調合法を教えてやろう。
会える確信もなしに、飛世は次の機会を考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!