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放課後の高校。
夕日に照らされた校舎。
BGMはYMOのPerspective。
そんな出来過ぎたシチュエーションの中、一人の男子生徒が教室に居残り、読みかけの小説を放り出したまま、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
誰も居ない教室で独り佇んでいると、次第に周りの音が耳に入ってくる。
隣の体育館から聞こえるのは、バスケットボールが跳ね返る音と、数十人の足音。校庭からは、野球部の打球音と掛け声。
そして、向かいの旧校舎からは、先週からピアノの音が聞こえるようになった。
旧校舎の東端は音楽室である。この学校にはピアノを弾く部活や同好会は存在しない。音楽教師にしては音を外し過ぎているので、生徒の誰かが弾いているのだろう。それでも先週よりは幾らか上達しているようだ。
そうしているうちに、辺りは黄金色から朱色へと塗り替えられてゆく。教室の掛時計が4時を回ったのを確認して、男子生徒は教室を出た。行く先は、新校舎の端にある、生徒会室である。
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