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リン。
言葉と共に、鈴子様の髪留めの鈴が短く鳴った。
すると、鈴子が頼んだ訳でもないのに少女は静かに語り始めた。
「お母さんが病気なんです。飲んでる薬も効かなくなってきて、すごく苦しそうで……」
次第に激情がはらんできて、少女は今にも泣きそうに顔を歪めた。
「手術もしたんですけど回復が遅くて……。
このままだとお母さんが死んじゃう!
お願い、お母さんの病気を治して!」
悲痛な叫びの後、少女はとうとう泣き崩れてしまった。
そんな少女の肩を、鈴子様は優しく叩きそっと微笑んだ。
そして、ショーケースに似た棚の方へ歩を進める。
棚の扉を開き、その中に飾られた膨大な数の鈴をじっくりと吟味していく。
その中からひとつ選んで、取り出したのは深海の色をした青い鈴だった。
「これをずっと身につけていて」
鈴子様は、少女の手にその鈴を握らせる。
手の中にあっても、青い鈴は小さく鳴る。
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