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リン。
「鈴の音色を聞いて。その音色をどうするかは……あなた自身だから」
少女は涙で濡れた顔を、不思議そうに鈴子様に向けた。
私は手を差し出し、少女を立たせた。
ようやく我に返ったのか、少女は恥ずかしそうに涙を拭いお代を払おうとした。
しかし、鈴子様がそれを断った。
いつも、そうだ。
「これは、私の趣味でやっているようなものだから」
私は扉を開いて、少女を見送る。
少女は私達に「ありがとうございました」と頭を下げて、扉をくぐった。
「頑張ってね」
いつも、鈴子様が最後に言う台詞だ。
この台詞を聞くたび、不思議と心に光が点るような感じがする。
青い鈴は、本当に小さくひとつ鳴った。
それは、まるで希望のような音だった。
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