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「あ、別に行きたないなら無理にとは…」
「行くッ!!!」
せっかくの謙也からのお誘いを俺が無下に出来るわけがない。
即答で答えた後に、俺は言葉の真意を確かめるべく
ゆっくりと口を開いた。
「…謙也」
「ん?なんや白石」
きょとんとした顔で俺を見つめる謙也は自分がした事をよくわかってないらしい。
「なんで、一緒に行かんか誘ったんかなって…」
一言話すのに口の中が酷く渇いてしょうがない。
冷や汗が滲んで自然と息をするのが止まった。
期待する、な…
「あーそれは蔵と一緒に行きたかったんやもん!!一度でええから親友と模擬店回りたかったから…」
にこにことしながら告げられる言葉に胸がチリチリと熱く…―痛くなるのが分かった。
やっぱりあれは俺の勘違い、なんや……。
少しずつ上昇していった気分は、もはやどん底に近いほど急降下していくのがわかる。
やっぱあかんなぁ…――
一度押し込めたこの想いは
愛しい君のちょっとした言動で
いとも簡単に、溢れ出てしまいそうなのだから
脆くなってる自分の心が
酷く滑稽で笑えたんだ。
純粋で透明で真っ白い、親友なんて綺麗な言葉
それは棘にしかならんから
痛みと苦しさが消えることはない―――…
END
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