何よりの…

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仕事柄シンジュクバベルを拠点にした方がよいと判断し、ライセンス取得を機に引越しもしたがここでもあまり治安の良くない区域を選んでピクシーは亮が心配で口を出した。 「自分がDBである事を、利用できるところで利用したいじゃない~」 当の亮本人はのほほんと笑ってそう言った。 クラスの高いDBのほとんどがもっと治安のよい居住区を拠点にしているのにどうしてもっといい生活をしないのだろうと疑問に思った。 が、この疑問はすぐに払拭される。 近所の人々に気軽に挨拶をする亮は地域にすぐ馴染み、ちょっとした用心棒扱いになってしまったのだ。 『そんな偉いDBさんがこんな近所にいてくれると心強いよ』 日中椅子に座ってぼんやりと街を眺めている老婆がそう呟いたのをピクシーは聞き逃していない。 そして、近所で何か問題があれば借り出されるのだ。 「亮がいない時や、仕事柄お手伝い出来ない場合もあるのでそこだけご注意下さいね~」 そんな釘も一応刺したが、近所に便利な用心棒が来たという空気はなかなか消えなかった。 亮本人は変わらずのほほんと笑うだけだが、酷い犯罪が減ったのも事実、身寄りのない子供にちょっとした仕事を回したりもしたが通貨であるマッカそのものを誰かにあげたりなどはしない。 あくまでも、「自力でマッカを稼ぐ」意識を子供達に教えた。 それから何年も経ったので、亮も住人も互いの関係を良く築き、ピクシーが一人で買い物に行っても他愛のない話をするくらいすっかり馴染んだ。
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