何よりの…

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シンジュクバベルの一角に開店している喫茶店で環と待ち合わせをしていた亮が現地に着いた頃、窓際の席で環が既に何かを飲んでいた。 いくら懇意にしてもらっているからとはいえ、DBとしても女性としても偉大な先輩を待たせてしまい、かなり慌てる亮を環は笑顔で座るように促す。 環はトウキョウ崩壊前を知る数少ない現役DBである。 年齢的にもかなり年上のはずなのだが、その外見は何があったのか若いままで、日本人らしいその黒髪に、よく似合うデニムスタイルであった。 「あまり気になさらずに、私の方がこのお店に近かっただけですよ。それより珍しいですね、亮さんが崩壊前の事を聞きたいと言うのは。」 「ありがとうございます、そう言っていただけるとすっごいホっとします… あ、珍しいですかね?あぁ~教授から結構聞いてたのでそんなに違和感感じてなかったので話題に出してなかったのかもですね。 でも今回は見たことも聞いたこともないものを見つけてしまいまして…これなんです。」 ゴトリとテーブルの上にウエノで見つけた箱を乗せた。 「ウエノの少し南の崩壊前で言うとアキハバラ辺りで見つけたんですがね、なんだろうなぁ~と気になりまして… 拭いたら<スーパーファミリーコンピューター>と書いてあるのを確認はできたんですけど、なんでしょうかね?」 「あぁ…なるほど…私もそんなに詳しくはありませんが、これは多分家庭用のゲーム機のハードですね。」 「ゲーム?!家庭用?!」 「ふふ…今の環境ではそういった事をする人などおりませんが、当時の子供に大人気でしたよ。このハードを使ってソフトを買い、ゲームするのです。 このハードは大分汚れていますが、そんなに状態は悪くないですね…もっと他のパーツはありませんでしたか?」 思わず飲んでいたコーヒーを亮は吹き出す。
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