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俺は驚いていた。
今この部室に響いているJ-POPにいそうな歌声の主が漫研部長だということ。
俺は身体を皆の方向に向けた。
どうやら驚いているのは俺だけじゃなかったようだった。
田口は面をくらった表情になっていて、裕二は苦笑をして、キーボードの女子は視線を由香に向けていた。
嘘だろ?と俺は心の中で言った。
何でこんな歌がうめえんだよ。もし“人は見掛けによらず。”というのを辞書で探したらこの事を言うだろうな。全く、有り得ねえぜ。
そして演奏が終わった。
久々だったせいか額に汗が出ていた。
すると。
「フー、さすがに久々のせいか腕が筋肉痛になりそうだ。」
と裕二は右手で左腕を揉みながら言った。
ああ、本当だな。
と俺は額の汗を拭いながら由香の方を見た。「それにしても由香、お前以外と歌上手かったんだな。驚いたぜ。」
するとそれを聞いた由香は自慢そうに初めてテスト100点を取れた小学生のような笑みを浮かべ、右人差し指を俺に突き付けこう言った。
「だから亮、言ったでしょ。アタイは音痴じゃないって。それで合格なの不合格なの?」
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