1「火の中へ入る」

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普通、物語の主人公には名前が有るものだが、普通と違って俺には名前が無い。 何故か。 それは俺が生まれた時の預言に理由が有る。 それは、この子供に名を与えれば世が荒廃する。と言うものだった。 だから俺は父の名を借りた名しか持たない。 だが、俺はその預言が正しいとは思わない。 既に世界は悪い状態であるからだ。 この神々の世は全てが戦いの舞台。 どうやって始まったかも分からない程に太古の昔から、世界中で戦争が絶えない。 理由もそれは沢山有るだろうけど、どれにしても、それは断ち切れない怒りと憎しみの果てしない連鎖。 せめてこの状況が悪化しない事を祈るばかりだ。 俺の生まれた国は「ルネイショ」と言う。 大陸の一番西に有って、月が沈む国と言う意味だ。 俺の軍の所属は後方部隊の第四隊で、そこの隊長。 後方部隊は、いわゆる弱虫の溜り場だが、俺の隊では錬磨を絶やさず、サボりもしないからだろうか?、弱者の溜り場の中では強かったりする。 いつまでこんな所に留まっている事に成るやら。 今は外国の輸送部隊を駆除する任務の最中で、いずれ来る標的を高い岩影から待っている。 風が吹き抜ける荒野の渓谷、その中を少数で構成された標的の部隊が抜けて行く。 馬の悪魔に荷を背負わせ、「例の物」を輸送している途中だ。 警護の兵が四人、それと悪魔使い。 その部隊を渓谷の岩影から俺の部隊が狙う。 「あれが、標的の部隊か…。 よし、行こう…。」 隊長である俺が合図をし、一斉に飛び掛かる。 槍が降ったかの様な奇襲に警護の兵も、悪魔とその使い主は首を貫かれ絶命した。 武器に付いた血を拭き取り、死体である事を確認した後、荷物の箱を確認し、開けた。 「…確かだな?」 「間違いありません。 これが「果実」です。」 俺はその果実を手に取り、じっと見つめ観察した。 その艶のある赤い表面に嫌な感じを受けたが、眉をひそめて再び箱に収めた。 「…。 箱も回収して引き上げるぞ。」  
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