失意の中で…

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ゲイル「…わかりました。」 ゲイルは頭を垂らしたまま承諾の意を示した。 マスター「しかし、一つ疑問があります。これだけは、総隊長をつとめさせていただく身として知っておかなければなりません。……………時空守りの一族を攻撃する理由はなんですか?」 理由。それは意志を持つものが行動を示す際に必ず必要となってくるもの。例え王であろうとも、理由なき殺戮などは許されない。 王「…………よかろう。そちにだけは教えてやろう。…理由は簡単だ。…怖いから、恐いから。それだけだ。」 王から伝えられた理由。単純すぎる理由。生物の深層心理には必ず存在しており、不変のものであり、無くなることのないもの。恐怖。生きとし生ける者に生きている間、つきまとい続ける感情。恐怖。…それだけのことなのに……王はそれだけのために大量虐殺をしろと言っているのだ。普通ではない。 王「あの一族は、儂がいくら配下に加われと申し出ても拒否をする。いくら金を積もうとも拒否をする。儂の好意から言っているものなんだぞ?」 ゲイルはこの時、王に対して呆れるという感情以外湧いてはこなかった。好意と言っている申し出。有り得ないものである。どう見ても、最強と言われている一族を味方につけ、自分に逆らう者達から護ってもらおうとしている。自分の利益のためだ。 王「なのに、奴らは最後には「これ以上一族に関わるならば消す!」など脅しをかけてくる始末だ!」 それならば一生関わらなければと、ゲイルは普通に考えた。…だが、それは王の普通ではない考えにより崩されることとなる。 王「儂に従わない¨モノ¨は要らぬ。今すぐそんな¨モノ¨は消してしまえ!」 …我が儘。そう。王の単なる我が儘のために、今まさに一つの一族(れきし)が消えようとしているのである。ゲイルは湧き起こる王に対する殺意を抑えることに必死だった。 王「…では、この件については頼んだぞ。」 ゲイル「…………はい…」 ゲイルはそう言って、静かに窓から暖かな日差しが差し込むその部屋より退室をした。 翌日、王城の近辺に存在する巨大な森が一夜にして消え去った事件はかなり有名な事件のひとつに数えられている………
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