4576人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
「誰が、対等に話をすると言った?」
『…………』
「下手なマネするなよ。」
ジリジリと逃げ出そうと身を捩らせても、影が色濃く魔物を縛り上げる。グリスが言葉に力を持たせ、魔物にきかせた。
「『真実を答えろ』――無意識に作用する、強制力のある言霊だ。お前は俺に逆らえない」
更に、漏れ出る闘気が、本能的に敵意を奪い従わせる。これに逆らってはならない、と。
「まず確認だ。お前は、お前が主の不利益と思う物事を生み出した場合、死に至るように仕掛けられているか?」
魔物は抵抗するように口に力を込めていたが、意志とは反して絞り出すように否、と言った。
「……ふむ。次、お前は何に属するものだ」
『魔族、悪魔属、竜、獣カラ作ラレタモノダ』
「キメラか……。お前に命令を下した大元は?」
言葉にならないのか、口がゆっくりと開くだけで返答はない。
「ほう、相手さんも少しは頭を使える奴か」
グリスは質問の仕方を変えた。
「お前はお前らの大元を知らない。そうだな?」
今度はそうだと返ってきた。
「では、お前を造ったのは、誰だ?」
『大鴉のヌシ』
「大鴉……の主?」
頭を捻ったグリスは、ふと、思い出したようにひとつ唱える。
「“サウスラトアーチ”ーー大鴉の主とやらを、思い浮かべてみろ」
共有したイメージには、ペルモニィやゴートよりもひと回り大きな体躯のカラスを従えた、白髪の大男。そしてその隣には。
「この男は………ん、クラウス?お前、クラウスに会ったことがあるのか」
セシルの義父、クラウスだった。大鴉の主とは、にこやかに会話をして握手も交わしている。
最初のコメントを投稿しよう!