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―――
「あれが消滅、ねぇ……何だよあの威力。古代魔法そっちのけか?規格外過ぎんだろ」
セシルは異質な物を見るようにして、落下してくるグリスを目で追う。実際に、消滅の力をこの目にするのは初めてだった。
消し去る力、滅ぼす力。
稀に異能を持つ者は生まれるというが、そのほとんどが力の及ぶ範囲は限定的で、世界中に知られるほどの者は僅かしかいない。
「あ、ローブ着てねぇじゃん…!気づく奴は気づくだろこれ、どーすんの」
特殊な者はいつだって目立つと、セシルは経験から知っている。
後始末をしながら、グリスが落下するであろう近くに急いだ。
―――
一方、グリスは消滅の力を発動させた瞬間、脳裏に弾けるような痛みを感じていた。
「………あうっ!?」
同時に閃く、知らない記憶。
召喚専用の魔法陣が描かれている――ヴィアスドール学園での使い魔契約の授業。
魔力を流して業と唸る召喚陣は小さな何かを吐き出し、ぼんやりと靄がかかった何かは、小さく「ころす」と呟いたところで脳裏の映像は途切れた。
(使い魔契約、の……。俺は、『何』と契約した?召喚し契約を、交わした…のか?召喚され殺す、と言った相手と?)
体勢を整えなければ地面に激突する。分かってはいるが、身体が麻痺したように思うように動かない。
「あ………くっ…」
脳内から訴える痛みに、思考が遮られる。もう激突すれば済むかとも考えた時、何かが近づいて来る気配があった。目の前に地面が、と思った瞬間。
「あんた、障壁出さずに受け身も取らないで頭からとか…死ぬ気かよ!」
グリスを激突から攫ったのは、セシルだった。
抱えられた状態から降ろされ、地面にそのまま座り込む。もう一言罵声を浴びせようと口を開いたセシルは驚きで息を飲んだ。
「……っ、ちょっと、それ」
「何が……」
驚いた顔のままセシルの手が伸びてくる。
「右目、見えてる?」
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