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リシルの入院する病室は奥にあるため、屋上からは少々時間がかかる。二分ほど走り、ちょうどこの階から離れようと階段にいた看護師を見つけた。
「ねえ看護師さん!部屋にリシルの先生呼んで、今すぐ!リシルじゃないんだけどちょっと緊急!」
そして、看護師の返事も待たずに、そのまま病室まで走った。扉を開けると、やはりクラウスがいて、目は開いているものの意識のハッキリしなさそうなリシルがいる。セシルはグリスをとりあえずベッドの端におろして腰かけさせた。
室内をキョロキョロと見渡して目的の物がないと分かるやまた病室を出る。どちらに向かおうか、と何となく左右に首を巡らせると、それはちょうど廊下の終わりにあった。
それ――車椅子を押して病室に戻る。ベッドの傍で整えていると、リシルの担当医が看護師と入ってきた。中年と思われる担当医は事情が分からずとりあえずリシルに向かおうとしたが、セシルがこれを阻んだ。
「すぐこの人検査して。頭とかぜんぶ」
医師がグリスと目を合わせるなり、ギョッとしたのが分かる。
セシルは襲撃で大規模な魔法を使った後、目がこうなった事、力が入らず立てない事を伝え、煩わしそうに不機嫌になったグリス車椅子に座らせ直した。
医師も何か予感がしているのか、特に詳しい話もせず看護師と病室を出ていった。あの様子だと、きっとすぐに検査されるだろう。
「おいセシル、どうなったんだ」
「さぁね。街は落ちついたから、知ってる軍のおっちゃんに任せてきた」
「い、いや、グリスさんは…」
あの様子を見て何も無かったと思う者など居るはずもなく、クラウスも顔を強ばらせていた。
セシルはベッドの横に座る。リシルはボーッと宙の一点を見つめ、時々思い出したようにゆっくり瞬きをしている。
セシルは内心を漏らすように小さく呟いた。
「無理矢理検査だよ。あの人……あれ、俺が思っている以上にヤバいのかもしれない」
顔を覗き込んでも、リシルからの反応はない。
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