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ドタドタドタドタ……バン!
勢いよく開かれた扉。
部屋の中にいた人物は驚いて入口を見遣り、誰なのかを認めると穏やかな笑顔を見せた。
「やあルスアン。仕事は片付いたのかい?」
「うん。急ぎの分は終わったよ、父さん」
ルスアン――ライズ・ルスアン・クォートは、王城の一角で息を切らせながら部屋に入り実父である現皇帝にそう言った。
皇帝は、かっちりとした正装ではなく、ゆったりとした服を着て椅子にもたれて読書している。
「私が動ければ良いのだがね…」
足を、もう何も感じなくなってしまった己の足をさすり、困った笑みを浮かべた。
ライズは皇帝の肩に手を置いて、もういい、とゆっくりと首を横に振る。
皇帝は目の前にある椅子を手で勧め、ライズが座ると世話役にお茶を用意するよう言い付けた。
「それで……どうだい?」
前々から、話題はもう決まっていたよう。
ライズはがっくりと肩を落とし、大きくため息をつく。
「何も。使い魔も何言っても口を割ろうとしないさ。ギルドにある終焉の紡績者の情報が消されてたし、もうお手上げだ。俺にもっと動ける時間あればね~」
「……おっと、学園をサボるのはナシだよ」
ライズは現在、学園に通いながらギルドにも闇帝として顔を出し、『常闇(とこやみ)の空』と名付けられたカーリナの暴挙の事後処理に追われて慌ただしく毎日を過ごしている。
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