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後ろから、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
振り返ると、彼がいた。
「まるで、壊れたロボットだ。」
彼はまたクスクスと笑っていた。
「それ、前にも言われました。
つか、俺は少年じゃないです。いちおう、高3ですから。」
子供扱いされたのに、少しムッとした。それでも、彼はクスクスと綺麗な顔で笑っている。
「俺からしたら、まだ子供だよ。第一、成人してないじゃないか。
だから、煙草は没収ね」
そう言って、彼は俺が加えていたものを奪い加えた。彼が煙草をくわえている姿は綺麗で、どこか儚さを感じさせた。
そして、なぜか、胸がギュッと締め付けられるような感じがした。
「どうした?人のこと見つめて…
惚れちゃった?」
おどけたように言う彼に、少しだけ、ほんの少しだけ、胸がときめいた。
「惚れてません。
アンタもオレも男でしょ。」
「そりゃあ、残念だ。
少年、名前は?」
「…りょうです。涼しいって漢字の。」
「涼ね…。いい名前だな。」
彼は、少し遠くを見て紫煙をはいた。
その横顔は夕日に照らされていて、まるで美術品のように美しかった。
そんな、美しく儚い彼の名前が知りたくなった。
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