煙草の香り

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「…名前。」 「なんだい?涼クン。」 彼は、俺に紫煙をフッと吹きかけ顔を傾げた。 「アンタの名前は? 俺だけ名前を知らないのは不公平じゃん。」 「そうだね…。 俺の名前は、かなた。奏でるに、太陽の太で奏太。」 「なんか、綺麗な名前ですね。アンタらしくて。」 素直にそう思った。儚くて、女性的で不思議な雰囲気の彼を表している。 「そうかい? 名前を褒めてもらったのは、涼クンで2人目だよ。」 奏太は目を細めてニッコリと微笑んだ。けれど、一瞬だけ悲しそうな顔をしていた気がした。 奏太が悲しそうな顔をしたのが気になって、じっと彼を見ていた。 彼は短くなった煙草を手持ちの携帯灰皿に入れ、とっくに沈んだ夕日の方向を見ていた。 オレンジと深い紫の綺麗なグラデーションを背景に立つ奏太。 (マジ綺麗だなー… 奏太サンみてると、胸がギューってなる。 なんでだ?) 奏太を見ていると胸が締めつけられるような感覚に陥る。 まるで、恋をしている時のようだ。 「…って、んな訳ナイナイ。」 「涼クン?」 考えていたことが声に出ていたのか、奏太は不思議そうにこちらを覗き込んでいた。
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