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「なにか、考えてたっぽいけど、悩みごとでもある?」
「イヤイヤ、なんでもないですっ!
ただ、俺で2人目ってことは他に誰が言ったんだろなーって…」
我ながら、苦しい言い訳だと思った。とにかく、話題が変われば良かったのだ。
俺が奏太に恋をしているかもしれないとは、知られるわけにはいかない。
俺はノーマルで、向こうもたぶんノーマルなのだから。
「ああ、それね。」
奏太は特に不信に思わなかったのか、俺の苦しい言い訳にのってくれた。
「いつだったけなー。ま、いいや。
昔ね、俺の先輩が
『お前の名前いいな。お前らしくて』
って言ってくれたんだ。」
奏太は懐かしそうに、愛おしそうに話してくれた。なぜか、俺はそんな奏太のことを見ていると、胸が締めつけられて苦しくなった。
「涼クン、どうした?」
「え?何がですか?」
「だって、涼クン…泣いてるよ。」
奏太に指摘されるまで気づかなかった。
涙は目に溜まって潤むぐらいじゃすまなくて、目から零れてほっぺたをつたって落ちていった。
「涼クン、俺、なにか君に悪いことでも言っちゃったかな?」
奏太は、ベンチに座っている俺の目線に合わせしゃがんでくれた。
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