切断

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──あれは…。 ○○は一人佇んでいる。 とても暗く、黒一色に塗り潰したような闇の中に。 辺りには木々が生い茂り、月明かりは何の意味も持たない。 その中であるものを見つけた○○は前方に向かって歩を進めた。 手探りで木々を避けながら、さくさくと落葉の乾いた音を辺りに響かせて。 五分程聴こえていた落葉の音が止む。 ○○はようやく目的のものに辿り着いた。 ──とても綺麗だ。 口に出さずに心の奥底で思う。 まるで美術品を見たかのような一言。 ──僕が唯一見ることの出来る色。 ○○は更に後に続く言葉を紡ぐ。 ──血液の赤だけが僕の視界を鮮やかに彩ってくれる。 闇の中で機能する筈の無い人間の眼。 しかし○○には黒い視界の中に一色、鮮やかな赤色が浮かび上がって見える。 一部が欠けた人間のシルエットに──。
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