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美紀は懐中電灯で祠の中を照らす。
「あの封筒だよね?」
「うん…」
美紀が手をのばしそっと封筒を取る。
ほこりを被り、少し傷んではいたものの、きっちりと原形をとどめ、まるで数年しか経っていないかのようだった。
祠が大事に守っていた。そんな風にも感じた。
二人は手に取った封筒を見た瞬間に異常な寒気を感じた。
霊能力者がよく危険を感じると襲われる寒気。
二人に霊感は無くてもこれだけは容易に感じられた。
それほど強い念がこの遺書からは発せられていたのである。
二人はお互いを見つめ何やら確認をした。
この封筒を開けるか開けないかの確認だ。
遺書を読んでみたい。
たったそれだけの軽い好奇心でここまで来た自分達の愚かさ。
これはそんなに軽い物ではない。
人一人が自らの命を投げ出そうとする直前に書いた手紙である。
決して遊び半分で読んではいけない。
そう警告するような強い念だったのかもしれない。
「ごめんなさい…」
二人の目に自然と涙が溢れていた。
「読もうよ美紀…」
静香が泣きながらも何かを覚悟した目で美紀を見た。
「うん…ちゃんと受け止めなきゃ…ゆりえさんに失礼だよね…」
美紀も覚悟を決めた目で封筒を見た。
そして封筒の中から優しく手紙を取り出し、読み始めた。
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