*苺味

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「ッ‥‥!」 「誰が連れていっていいと言った。」 微かに先輩の温もりを感じるわたしの左手。 「‥‥へぇ、ただのヘタレかと思ってたけど‥‥随分しぶといですね」 「手、離せ。」 敦史の言葉には何も答えずにわたしの手を強く握りしめる先輩。 「‥‥俺、諦めた訳じゃないですから。‥中2からずっと楮子のこと好きだったんだから簡単には譲らないよ?」 え、中2から‥‥‥? 敦史は握っていたわたしの右手をゆっくりと離した。 その瞬間、先輩は再びわたしを自分の元へ引き寄せる。 「譲る気はない。‥‥俺が好きなのは楮子だけだから」 「‥‥ッ」 ずっとずっと言って欲しかった言葉。 "可愛い"や"綺麗だね"なんかよりも言って欲しかった‥‥"好き"の言葉。 .
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