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「…ある時、私は怪我をした友達の傷を、この能力を使って治しました。私にしてみれば、何てこと無い普通の行動だった…。でも、周りのみんなは違いました…。」
『…ひ…っ!!きゃあぁぁぁっ!!こっちに来ないで!!』
『魔女…!!いや違う…化け物だ!!』
『触られたら呪われちゃうよ!!』
『気持ち悪い!!あっちに行けよ!!』
それまでの楽しかった日常は、一瞬にして崩れ去った。
「…それから、毎日いじめられる様になりました。でも両親は…、家族は私を守ってくれる…信じてくれる!!
…そう思ってました。だけど…。」
「信じてくれなかった…と。」
「…………。」
沖田さんの言葉に私は無言で頷いた。
「私の能力を知った家族は、私を避ける様になりました。
私を見てもくれないし、会話もする事も無くなりました。それでも、顔を合わせる度に、家族が必ず私に向かって言う言葉がありました。」
「その言葉とは…?」
近藤さんは悲しげに眉を寄せていた。
「……産まなきゃ、良かった…と。」
「なっ…!?」
「……お前なんか、産むんじゃ無かった。どうして、お前みたいな子が私達の娘なの…。
私達は化け物の子供なんか欲しくなかったと、毎日の様に言われました…。」
「……酷ぇ。」
「…それでも、その時の私には…まだ居場所がありました。…祖父母が私の、唯一の居場所だったんです…。」
いつも優しく私を包んでくれた二人…。
もう二度と会う事も出来ない…。
「…負けるんじゃない、心を強くしなさいって祖父は、私に剣道を教えてくれました…。…祖母は私に人を信じて、愛しなさいって…優しく頭を撫でながら言っていました…。」
そうしたら、いつかきっと貴女を信じて、愛してくれる人が現れるから…。
「…私はその言葉を信じて生きて来ました。…何度避けられても、無視されても負けずに立ち向かいました…。…でもそんなある日、祖父母が事故で亡くなったんです。」
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