終焉:無の世界

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「もう一度言おう。此処は“無”の世界。」 御神がそう言葉を発した直後、目の前に葉をつけず、枯れた様な細身の木がどこからともなく現れた。 御神はその木の枝に、静かに留まる。 突然の事に目を見開く少女。 「此処では理論も秩序も通用しない。望めば叶う、否、叶えてやる。我が全てだ。」 「そんな、目茶苦茶な……。」 御神の言葉に驚きを隠せず動揺する少女。 しかし、御神が嘘を言っている様には見えない。 その言葉には有無を言わさない自信が伺える。 そして今までに幾度も普通では有り得ない体験をしている自分がいる。 もしこれが夢でないのなら。 もし本当に望みが叶うのなら。 既に決まっている。 ただ一つしかないのだから。 少女の鼓動が一気に速まる。 そして同時に瞳の色が変わる。 それに気づいた御神は笑みを零す。 「主の名は?」 「……相模 雪乃(サガミ ユキノ)。」 「では相模 雪乃。もう一度問う。」 御神と雪乃と答えた少女の視線が交わった。 「主は何を望む?」 雪乃は目を閉じ、心を落ちつかせる。 そして御神の問いに答えるべく、口をゆっくりと開く。 「私の望みは……、」  
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