327人が本棚に入れています
本棚に追加
霞んだ視界の中で、小さい時の自分が映っている。
それは小学校低学年ぐらいの幼さ。
これは夢?自分の記憶?
しかし、記憶にしては明らかにおかしな点が幾つもある。
まず周りが山や緑に囲まれて、綺麗な川もある。
それは見るからに長閑(ノド)かな“田舎”と思える景色。
私は東京生まれの東京育ち。
こんな田舎に行った覚えなんて全くないよ?
そして一緒にいる人達。
霞んではっきりと顔が見えないが、若そうな男性二人と、同じ年頃だと思われる背丈がい引男の子が一人。
何故か三人共、男物の浴衣みたいな服装や袴姿をしている。
なにこれ……、コスプレ?
全く覚えがないんだけど。
……ってことは夢?
四人はどこかに向かっているようだった。
そして暫く歩いていると、大木の下に着いた。
その木は花がついてない為、何の木なのかはわからないがとても立派な木。
何故かその大木には見覚えがあった。
そして彼らと楽しそうに話し、はしゃぐ自分を見てどこか懐かしいような、暖かいものを感じる。
そう思った瞬間。
ズキンと頭に鋭い痛みが走った。
そして痛みが強くなると比例するように、視界がゆっくりと遠ざかっていく。
ダメッ、まだ見ていたいのに!
何もわからないままなんて……!
しかしその想いは届かず、先程の光景は消え、真っ暗な闇が広がった。
そして彼女は本当の眠りに落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!