一章:平穏と不穏

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「……乃、雪乃ってば!!」 聞き覚えのある声がしたと思った瞬間、背中に大きな鈍い痛みが響く。 その衝撃に驚き、机に伏せていた体を起こすのは先程の女子生徒。 名は、相模 雪乃(サガミ ユキノ)。 「もう授業は終わったのにいつまで寝てるつもり?」 「えっ?あっ……。」 目の前にいた女子生徒の言葉を聞き、辺りを見回すと、クラスメート達が帰る用意をしていたり教室を出ていく所だった。 「今日も隼人君は部活でしょ?一緒に帰ろ!」 先程から雪乃に話しかけている女子生徒は、一番親しい友人の高田 渚(タカタ ナギサ)。 高校からの付き合いだが、気が合いとても仲が良い。 その渚に叩き起こされ、ぼやけていた雪乃の意識が今、漸(ヨウヤ)くはっきりとする。 「遅いと置いていくよ?」 「ちょ、ダ、ダメ!」 雪乃の慌てぶりを見てクスクス笑う渚。 それに怒りながらも雪乃は慌てて鞄に荷物を詰め、渚と共に教室を後にした。  
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