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『ちょっと、そこの』
「……」
『ねぇ、聞いてる?』
「……」
姫蝶の呼びかけには答えず、光は無言で歩く。
一方、光の少し後ろを歩く姫蝶は、
学園長が不在な上に、突然現れた身元のよくわからない光についてこいと言われ、
そうするほかすることがなく素直について行くも、行き先も告げられないことに段々苛立ちを感じ始めていた。
『…ねぇってば、えーと…西園寺?とやら。どこへ向かっている?』
光はピタリと止まって小さくため息をつくと、姫蝶の方を首だけ動かして見た。
「お前、本当に俺のこと知らないんだな」
『?初対面なのだから当然だと言ってるだろう』
「…仮にも、華月院の跡取り候補だろ?俺の予想ではお前が最有力っぽいけど、どんな教育受けてきたわけ?」
姫蝶は光の言葉にムッと顔をしかめた。
『…別に、あなたには関係ない。華月院だろうと、私は私だ』
(私の家……華月院。)
それはいつも大きく重く姫蝶につきまとう。
「…ふーん、あっそ」
光は前へ向き直すと再び歩き始めた。
(…この西園寺とかいうやつ
何かムカつく…!)
姫蝶は光の後ろ姿に向かって思いっきり眼を付ける。
姫蝶の睨みに気付いてる光は、呆れ混じりのため息をついた。
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