第1話-榮花学園-

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『ちょっと、そこの』 「……」 『ねぇ、聞いてる?』 「……」 姫蝶の呼びかけには答えず、光は無言で歩く。 一方、光の少し後ろを歩く姫蝶は、 学園長が不在な上に、突然現れた身元のよくわからない光についてこいと言われ、 そうするほかすることがなく素直について行くも、行き先も告げられないことに段々苛立ちを感じ始めていた。 『…ねぇってば、えーと…西園寺?とやら。どこへ向かっている?』 光はピタリと止まって小さくため息をつくと、姫蝶の方を首だけ動かして見た。 「お前、本当に俺のこと知らないんだな」 『?初対面なのだから当然だと言ってるだろう』 「…仮にも、華月院の跡取り候補だろ?俺の予想ではお前が最有力っぽいけど、どんな教育受けてきたわけ?」 姫蝶は光の言葉にムッと顔をしかめた。 『…別に、あなたには関係ない。華月院だろうと、私は私だ』 (私の家……華月院。) それはいつも大きく重く姫蝶につきまとう。 「…ふーん、あっそ」 光は前へ向き直すと再び歩き始めた。 (…この西園寺とかいうやつ 何かムカつく…!) 姫蝶は光の後ろ姿に向かって思いっきり眼を付ける。 姫蝶の睨みに気付いてる光は、呆れ混じりのため息をついた。
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