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光がパンパンと手を叩くと、一人の女性が奥からスッと現れた。
「お前付きのメイド」
そう光が紹介すると、女性は姫蝶に深くお辞儀をして言った。
「本日より華月院様の身の回りのお世話をさせていただきます。緑(ミドリ)と申します」
光は姫蝶についての豊春からの伝言を緑に伝える。
緑は「かしこまりました」と頭を下げると、姫蝶を案内しようとした。
…が、当の姫蝶は
『…は?』
状況が理解できず立ち尽くしていた。
「どうかなさいましたか?」
『…緑さん、と言ったな。どういうこと?』
「…と、仰られますと…?」
緑は困ったように光を見た。
姫蝶もそれを追って光に顔を向ける。
『意味がわからない。ここは学園長のお宅では?』
「誰もんな事言ってねーだろ」
姫蝶は耳を疑った。
(学園長の邸宅ではない…?)
『…じゃあ、ここは何?なぜ私を連れてきた?』
「俺は豊春さんに頼まれた通りにしただけだ。…その様子だと、何も知らないんだな、お前」
姫蝶はムッと顔をしかめる。
光は緑に一旦退室するように促し、側の大きなソファーにドカッと腰を下ろした。
「そこ、座れ」
『……』
光の口調に再びイラッとするも、姫蝶は少し間を置いて反対側に腰を下ろした。
…とにかく今は、この訳の分からない状況を把握すること。
それが最優先だ。
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