第1話-榮花学園-

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抜け出すと言っても、私服では生徒だとバレて支障をきたすおそれがある。 こういう、校内に生徒が不在の時に必ずいる者… 『すみません』 「え?あなたは…」 『臨時で来ました。作業着を貸していただけませんか?』 清掃員。 「あらやだ、ここのお嬢様かと思ったわ~」 中年の女性は、姫蝶に快く清掃員の控え室の場所を教えてくれた。 近くの小さな洋館がそれで、姫蝶はそこで作業着に着替えた。 『すみません、大門はあちらの方角ですか?』 庭師の年配の男性は、優しい笑顔で答える。 「ああ、あっちだ。あんた随分若いねぇ」 『新人なので』 お礼を言って別れると、大門のある方角へと向かった。 …はずだった、それから数十分後… 『…ここ、どこ』 庭なのか森なのかわからないような所で、姫蝶は迷子になってしまった。 確か、ここを抜けると大門への道があったはず。 昨日ここを通った時の記憶を必死に思い出す。 せっかく順風満帆に来たというのに、ここで折れては元も子もない。 姫蝶は腕を組んで策を講ずる。 …その時 ガサッ 『!』 近くのバラの茂みから聞こえた音に、バッと顔を向けた。 「あれ、君ー…」 長身の男が、バラの香り漂う風と共に現れた。
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