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『あった…!』
思わず声に出す。
そりゃそうだ。
やっとのことで大門に通じる道に出たんだから。
…しかし
(…広い。で、遠い。)
大門が見えない。
それほどの広大な敷地の中に学園はあるのだ。
(昨日は門から校舎までは車だったからな…。)
だけど車がない今、歩くしか方法はない。
姫蝶は気合いを入れると、道に沿って歩き始めた。
それからしばらく経って、大門が微かに見えてきた時
『…!』
前方から黒塗りの車が走って来た。
隠れようにも、あちらからはすでに丸見えだろうし、今頃側の木に隠れても逆に怪しい。
それに、清掃員の格好をしているのだから、気にも留めず普通に通り過ぎていくかもしれない。
姫蝶はあまり目立たないように隅に立つと、車が通り過ぎるまで顔を伏せるように会釈した。
…ところが
キッ
『!』
車は少し先で停止した。
姫蝶が振り向いたのと同時に、スモークがかった車窓がガーッと下りていく。
その窓から顔をヒョコッと覗かせたのはー…
「ねぇ、」
美少女?…いや
少年だった。
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