第1話-榮花学園-

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少年が姫蝶の前になるよう、車がゆっくりとバックした。 (おいおい…) あっさり行かせてくれよ…と心の中で嘆く姫蝶。 そんな姫蝶に、目の前の少年はニッコリと笑いかける。 「見たことない清掃員さんだね。新人さん?」 ピンクに近いような栗色のふわふわした髪に、茶色の大きな瞳。 本当に少女のような愛らしい容姿を持つ、その少年はー…城之内 時雨(ジョウノウチ シグレ)。 明らかにここの生徒だ。 光以外はまだ海外のはずなのに、二人続けて生徒に遭遇していることに疑問を抱く姫蝶。 とにかく、目の前の問題を早急に片付けよう。 そう気を取り直し、姫蝶は時雨を真っ直ぐに見て答えた。 『臨時雇いです』 「やっぱね。けど、僕と同じ歳ぐらいじゃない?」 『まあ、そうだと思います』 「…何か淡白だなぁ。何で清掃員やってるの?」 『私的な事情でやむなく』 話が、終わらない。 姫蝶は若干苛立ちを感じてきた。 一方、時雨は、姫蝶の反応が意外…というより、今までに受けたことのないものだったので、興味を抱いた。 そこで、提案する。 「ねぇ、どっかに向かってるの?」 『あ、ちょっと…』 「!なら、送るよ。乗ってって」 何を言い出すんだ少年。 姫蝶は口には出さずにツッコむ。 これ以上はヤバい。 そう判断すると、 『すみませんが、急務があるので』 サッと会釈をして、姫蝶は走り出した。 「ちぇ~…」 口を尖らせて、その後ろ姿を見る時雨。 (あ、名前聞くの忘れた。…せっかく面白いの見つけたのに。) その少女の名前は、すぐ後で知ることになる。
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