第1話-榮花学園-

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時雨と会って数十分後、姫蝶は大門の前に立っていた。 気付けば太陽は山の上。 自室を出てからここまで来るのに、予定以上の時間を費やしてしまった。 周りに人はいない。 逃げ出すならまさに今だが… (やはり簡単には出られないか。) 門だけでなく、学園の塀も高い。 それに、不審な強行突破は門外にいるであろう警備員たちに捕まってしまう。 一応この事態を想定していた姫蝶は、ある策で脱出を試みることにした。 門が開く瞬間ー…車が通る時に、サッと抜け出す。 門外に出さえすれば、後は芝居でも言い訳でも何でもして家に帰る。 問題は…いつ、その車が来るか。 時間が過ぎるほど、緑にバレて捕まる可能性が高まるし、車が来なければ…終わりだ。 (頼む…。) 門の脇で掃除をしている振りをしながら、姫蝶はただ開門の瞬間を待った。 …その時 大門が、微かに軋む音と共にゆっくりと開いた。 『!』 黒い高級車が頭を出す。 姫蝶は怪しまれないように小さく会釈をして、素早くその車の横を通り抜けようとした。 (出れる…!) 姫蝶の足が、外の地面を踏もうとした瞬間… 「待て、そこの清掃員」 …またしても、若い男の声に阻まれてしまった。
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