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「おかえり」
寮のドアを開けると、光がそう言って姫蝶と清治を迎えた。
しかし、その言葉の意味は姫蝶と清治とでは大きく異なる。
清治は口元を少し緩ませて「ただいま」と言うと、上着と荷物をメイドに預けた。
そして、先ほど無礼を謝罪したばかりの姫蝶をソファーへと案内するため振り向き直した。
…が
『……』
姫蝶は光を睨んだまま動かない。
目で話しているかのように、二人はお互いを見つめる。
「…楽しかったか?あと一歩だったのに、惜しかったな」
やっと口を開いた光が、フッと口角を上げる。
「夕食までまだ時間がある。着替えてこいよ」
『…最初から知ってた?』
姫蝶が静かに尋ねる。
「…ああ」
途端、興味を失ったように光は手元の本に目を落とした。
緑が姫蝶の元へ歩み寄り、姫蝶は光を一瞥すると左側の女子棟へと向かった。
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