第1話-榮花学園-

26/30
前へ
/62ページ
次へ
「おかえり」 寮のドアを開けると、光がそう言って姫蝶と清治を迎えた。 しかし、その言葉の意味は姫蝶と清治とでは大きく異なる。 清治は口元を少し緩ませて「ただいま」と言うと、上着と荷物をメイドに預けた。 そして、先ほど無礼を謝罪したばかりの姫蝶をソファーへと案内するため振り向き直した。 …が 『……』 姫蝶は光を睨んだまま動かない。 目で話しているかのように、二人はお互いを見つめる。 「…楽しかったか?あと一歩だったのに、惜しかったな」 やっと口を開いた光が、フッと口角を上げる。 「夕食までまだ時間がある。着替えてこいよ」 『…最初から知ってた?』 姫蝶が静かに尋ねる。 「…ああ」 途端、興味を失ったように光は手元の本に目を落とした。 緑が姫蝶の元へ歩み寄り、姫蝶は光を一瞥すると左側の女子棟へと向かった。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加