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学園長室があるということは、ここが学校というのは本当なのだろうか?
(…何でもいい。
話をつけて、私は帰る。)
手短に深呼吸をして、取っ手に手をかけた。
ーガチャ…
『失礼、華月院と申します……ん?』
部屋の中には、誰もいない。
『学園長、いらっしゃいませんか?』
見てわかるが、返事はない。
(…留守か。)
姫蝶は小さくため息をつくと、とりあえず目の前の応接用ソファーに座った。
(…さて、どうしたものか。)
学園長が不在なのでは、行動しようがない。
時計が針を刻む音だけが、室内に響いている。
(…暇だな。)
ふと、姫蝶の視界にテーブルの上の高級茶菓子が見えた。
(…一個ぐらい食べても、支障はないだろう。)
お菓子に手を伸ばした、その時
ーピリリッ
『!』
ポケットから機械音が鳴った。
(そうだ!携帯電話があった!)
携帯の存在を思い出し、姫蝶は急いで通話ボタンを押した。
相手はもちろん
『もしもし、叔父上!』
ー「…姫蝶、出て早々大声出さないでよ」
叔父の豊春だった。
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