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ー「どう?良い所でしょ、気に入った?」
豊春の声は、いつものおちゃらけた調子。
『…良いもなにもっ』
姫蝶はソファーから立ち上がった。
『また私をからかって!ここが学校?ご冗談でしょう。執事には置いていかれるし、変な男たちには無理やり引きずられるし…何なんですか!』
ー「そう一気に喋らないの」
豊春に軽くたしなめられ、更に姫蝶はムッとする。
『…叔父上の仕業でしょう。私を無理やりこんな怪しい所に入れさせてっ』
ー「だって~姫蝶絶対素直に聞かないし。そこの警備員さんに頼んでおいたんだ。でも、綺麗な学校でしょ?」
『だから学校じゃ…!』
姫蝶の抗議を気にせず、豊春は言葉を続ける。
ー「ところで、今学園長室だよね?学園長は不在?」
無視され、少し頬を膨らませながら答える。
『…そうですが』
ー「ちゃんとノックして入った?」
…忘れていた。
『ノックは…してませんが、ちゃんと礼儀正しく待ってます』
ー「お菓子に手出してたりして」
(ぐ…!)
豊春は姫蝶を観察しているのだろうか?
『…とにかくっ、私は帰ります!』
豊春にこれ以上呑まれてはならないと、姫蝶は強く言い放った。
その時
ーガチャ…
扉が開いた。
学園長が来たと思い、姫蝶が振り向いた先には…
「…何してんの、お前」
明らかに学園長ではなく、少年でも大人でもない、
一人の男が立っていた。
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