第1話-榮花学園-

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「何でここにいんの?」 彫刻のような顔立ちに、伸びた手足。 明るい髪をかけた左耳にはピアスが光る。 姫蝶に鋭い眼差しを向ける男ー…西園寺 光(サイオンジ ヒロ)は、 扉にもたれかかって腕を組んだ。 「答えろよ」 顎を少し上げて、挑発するように言う。 光が現れてから今まで、無意識に見入ってしまっていた姫蝶は ハッと我に返ると、携帯を耳に当てた。 『叔父上、私の他にもノックせずに入室する者がいました』 ー「え?」 『同年代の男が来ました。でも彼は学園長ではないですよね?』 「おい」 自分の質問に答えず、むしろ全然気にしていない様子の姫蝶に光は少し苛立つ。 「お前、名前は?」 姫蝶は光の服装を見た。 薄手のロングニットにビンテージらしきジーンズ。 …おそらく、自分と同年代の学生。 姫蝶はそう判断した。 『そちらから名乗るのが礼儀では?』 学園長ではないのなら、こちらから言う必要はない。 光は一瞬驚いた顔をした後、探るように目を細めて姫蝶を見た。 「…お前、俺のこと知らないの?」 『当たり前だろう』 「ここの、生徒だろ?」 『いや、違う』 光はわけがわからず、少し首を傾げる。 ー「…姫蝶、替わって」 『え?』 会話を聞いていた豊春が、光に電話を替わるよう促す。 『…はい』 「…は?」 『あなたに替わるって』 「はぁ?」 ズイッと渡された携帯を、困惑しながらも光は渋々耳に当てた。
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