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「あ、豊春さん」
光は電話の相手が豊春だとわかると、
さっきの威圧的な態度とは打って変わって時折笑顔を見せながら話す。
『……?』
(どういうことだ…?
なぜこの男が叔父上を知っている?)
少しして、姫蝶に携帯が返された。
「はい」
『……』
無言で受け取り、再び耳に当てる。
『…叔父上、この男をご存知で?』
ー「うん。そこの生徒の、西園寺君だよ」
『西園寺…?』
姫蝶がチラッと横目で見ると、光は無表情のままこちらを見ていた。
ー「学園長は今日はいないみたいだね。連絡してなかったし、また今度挨拶するといいよ」
『不在でも構いません。私は家に帰ります』
ー「…姫蝶、君は今日からそこの生徒だ。榮花は、君を最高のレディにしてくれるよ」
『…仰る意味がわかりません』
第一、寝食はどうするのだ。
家に帰るのは当然だろう。
『学校も他のにしてください。別に転校しなくても、以前の所でも構いませんし』
電話の向こう側から、豊春の小さなため息が漏れる。
ー「…姫蝶、まずは1ヶ月でいい。試しにそこで過ごしてごらん」
『嫌です』
キッパリと断る。
…けれど
ー「頑固だなぁ~。ま、西園寺君にも頼んでおいたから、頑張って!」
『えっ!ちょ…』
豊春は気にせず励ましの言葉をかけると、そのまま通話を切った。
慌てて姫蝶はかけ直すが…出たのは留守番サービスの声。
『~~~!』
(叔父上のバカ!)
恨めしげに携帯を見つめていると…
「…お前か、華月院の娘って」
『!』
光が呟いた言葉に振り向く。
「ついてこい」
光は扉を開けた。
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