不幸せな幸せ

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 結局僕は、ムチウチとアバラ二本骨折で、入院することになった。  でも、マユのせいにしたくなかったから、屋上のドアに激突したことにしてもらった。  通学途中にある総合病院に入院したから、マユはほぼ毎日、ノートやプリントを持ってお見舞いに来てくれた。  マユは、最初の頃の、お喋りでよく笑う女の子に戻り、僕が頼みごとをする時は神様になってくれた。  僕も、だいぶカツゼツが良くなってきた……とはいえ、一度詰まるとスラスラ言えないのが辛い。 「こんにちは。どう、具合は」 「うん、だいぶ、いいよ。こ、こないだの、数学、ぷりん、と、なんだけど」 「解らないとこ、あった?」 「の、のとの、解せっ……みみみ、み見て、も、ちょっと」  ああ、まどろっこしい。あの時は、すっかり克服したって、思ったんだけどな……  マユは嫌な顔一つせず、プリントの裏余白に、解説の解説を書いてくれた。  宿題や課題、マユのおかげで、入院していても授業内容に遅れることは無さそうだ。そうして、勉強後のティータイムはお喋りの時間。  あんまり話が長くなると、すぐ暗くなってしまうから、実は僕は気が気じゃないんだけど。
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