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そこは、全て黒に包まれた
何も見えない世界だった。
私は四角い箱の中に座っている。
小さいけれど、私の身体が入っている他はなにも無いようで、まだ随分余裕があった。
とは言え辺りは暗く箱の色や明確な形はわからないのだけど、触った感覚で大体の広さや幅、そして素材が木のようなものである、という事は何とはなしに感じられる。
どうしたものだろうか。
考えてはみるものの、何も見ることは出来ないし、周りに他の誰かがいる気配はしない。
最も存在を確認できたところで、私はこの箱からは出られないようだ。
何故かはわからない。
ただ、そんな気がする。
私は目を閉じた。
不意に、視界が白くなった。
ほんの一瞬だけれど、閉じた瞼の奥で、何かが光ったのだ。
それは余りに強く、視界の隅で白や青、赤などの閃光がちらちらと動く。頭がくらくらする。
同時に、私の入っている木箱が、ゆっくりと動き出した。
突然だったので驚いたが、次第に身体の揺れや空気が動くことに慣れていった。
「……ア、」
その時、私は初めて声を出した。
言葉というには、余りにも短い音だった。
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