後悔 降りしきる悲しみの雨─橘 翠─

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 ──ザァーー……  「──夏苑(カエン)!」  音を立てて雨が降りしきる中、守れない町の外れの森の花園に雨に打たれ全身を濡らしながら、立て膝をつき、長い金の髪と碧の瞳の女性の体を抱いた青年がいた。外見は22、3だろうか。元服済みの男性には珍しい腰よりも長く、真っ直ぐに肩から背中へと流された赤茶に近い茶の髪の青年。左が長い前髪で隠され、隠れていない右目は翡翠のように鮮やかで水晶の如く澄んだ翠。キッチリと着付けられた青の着物を着ている。女性は腰の辺りまである金色(こんじき)の髪と瑠璃の様に深く、それでいて鮮やかな碧の瞳で着物は薄紅色。肌は白く、手足は細く長い。顔立ちは淡麗で、美しい。  二人は花園の中で花たちに囲まれながら雨に打たれていた。二人の側には血と雨に濡れた短刀が落ちている。  女性の腹部からは紅い血が流れ、その血は雨水に滲み、血に小さな紅の水溜まりを作った。  青年の着物の下部は流れた血で紅く染まっている。
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