黒い蟲

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
いつからだろう、時々ボクの皮膚を貫いて顔を出す無数の黒い蟲。 しばらく動いた後なにをするでもなく、また身体に戻っていく。 なにか悪いものに寄生されたらしい、気味が悪いが 前例がないので晒し者にされるかもしれない。 無論、こんな身体だから人に接するのは苦手だ。 当然彼女など作れるはずもない。 いつか脳まで侵されるかもしれない、そんな不安を抱え、ひっそりと生きていこう、そう決めていた。 そんなボクに近づいてくる女性がいた。 今まで感じたことのない感覚。 蟲のことを隠してでも一緒にいたいと思った。 付き合いはじめてから、蟲はあまり顔をださなくなった。 幸いなことだが、もしかしたら簡単には出てこれないくらい成長してるのかもしれない。 それならば、なおさら残された時間を彼女と過ごしたいとボクは思った。 しばらくして彼女の部屋に誘われる、ボクの身体には蟲に空けられた無数の痕がある。 それが気がかりではあったが、やはり本能には勝てない。 はじめて入る彼女の部屋、会話が頭をすり抜ける。 感情の抑えきれなくなったボクは、彼女をベッドに押し倒し口づける。 彼女も応えるように舌を絡めてくる。 舌? なにかぬるっとしたものが口に入ってくる。 慌てて離れてみると、彼女の開いた口の奥から黒い蟲が顔を出していた。 「なっ……………!?」 声が出ない。 気づくと彼女のソレに呼応するように、ボクの蟲も喉から顔を出していた。 ほぼ同時に蘇る古い古い記憶。 ああ、そうか。 寄生していたのはボクらのほうだ。 ボクらはこの黒い蟲の力を借りなければ生きられないちっぽけな存在。 君にこんなに惹かれたのは、ボク達はもともと一つだったからなんだね。 黒い蟲同士の行為の後、ボクは考えていた。 これから産まれる新しい蟲には、どちらの細胞を植え付けよう。 あんなに愛しかった彼女に対して、殺意のような感情が芽生えていることをボクは感じていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!