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まただ…
またあの女が立ってやがる。
一週間ほど前にここに越してきてから毎晩寝室の隅に女が現れる。
最初は焦ったが僕には霊感とかあまりないのでボヤーっとしか見えないし、何をしてくるわけでもないので意外と平気になってしまった(笑)
まぁ、気味が悪いのは確かだがこんな便利な物件を手放すほどではないと思っていた。
今日も女は口をパクパクさせて何か言っている(ように見える)が、僕には何も聞こえない。
あきらめて他を当たってくれ。
そう思いながら僕は眠りについた。
翌朝、何事もなかったように僕は起きて仕事に行く支度をはじめた。
こんなに朝ゆっくりしていても大丈夫なんて素晴らしい環境だ、あの女さえでなければ最高なのだが贅沢が言える収入でもない。
寝室を出ようとしたとき、女が立っていたところに何滴か水滴が落ちているのに気づいた。
「なんだよ、もぅ。」
僕はそのへんにある洗濯物でそれを拭き取って会社へ向かった。
引っ越してきて10日目、今日も出るのか、当たり前のことのように思いながら僕はベッドに潜り込んだ。
深夜、決まって目が覚める彼女のお出ましだ(笑)
薄目を開けて部屋の隅を見る。
あれ、いない。
いつも立っている場所に女はいなかった。
と同時に背筋にゾクゾクっと寒気が走る。
隣に誰かいる…。
僕は意を決して一気に振り返った。
「うわぁぁーっ!」
思わず叫んでしまった。
あの女が隣に寝ていたのだ、いつもより少しハッキリ見える真っ黒い目からは涙を流している。
「……テ、…て。」
何か言っている…
僕はそのまま気を失ってしまった。
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