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12日目
翌朝、僕は自分吐いた汚物にまみれていた。
ベッドはまた空だったが昨日の光景を思いだし、部屋の匂いも相まって再び戻してしまった。
今日は会社を休むことにした。
だからと行ってこの部屋にも居たくないのでシャワーを浴びて不動産屋に向かった。
「いや、お客さんがね、ワケアリでもいいから安いとこっていうもんだからねぇ。もう貸すつもりなかったんだけど。でも、なんか出たっていうのは初めてですよ。」
じゃあ他にどんなワケがあったんだ?
「いなくなっちゃうんですよ、もぬけの殻。連絡もとれないし。お客さんの前も若い女性がお金ないからどうしてもっていうから貸したんですけど、やっぱりちょうど二週間くらいでいなくなっちゃって…。」
ワケアリにもほどがあるだろ、なんて不動産屋だ。
「とにかく新しいところは探しますんで、それまでお友達のところとかで待ってもらえますか?」
納得いったわけではなかったが、あの部屋から出られるのなら細かいことはどうでもよかった。
いつまでかかるかわからないのでホテル代は厳しい。信じてくれるかわからないが同僚に相談することにした。
「マジか?そんなこと本当にあるんだな。わかった今日は残業になりそうだから夜にきてくれ。」
意外にも快諾してくれた。
僕は夜まで休むのにマンガ喫茶に行くことにした。
あそこなら仮眠もとれる。
少し休むつもりがこのところの疲れのせいか寝入ってしまい、時刻はすでに23時近かった。
僕は同僚に連絡し、同僚のマンションへと向かった。
「遅かったなぁ、まぁあがれよ。」
出てきた同僚はこんな時間なのに出かけるような格好をしていた。
「どこか行くつもりだったんじゃないのか?」
「うん、いいんだ。もう大丈夫になったから。」
「?…そうか。」
同僚は僕にコーヒーを入れてくれた。
辺りを見回すととても同じ給料で生活してるとは思えないほどの部屋だった。
「しかし、お前があの部屋に住むって聞いたときはびっくりしたよ。あの部屋に住んだ人は13日目にいなくなるってこの辺じゃ有名だからな。」
「な、知ってたんならなんで教えてくれなかったんだよ?!」
「え、だって今日がその13日目だろ?」
時刻は0時をまわっていた。
振り向いた同僚の目は僕の知っている同僚の目ではなかった。
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