デボラ&ランスロット

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あれは殺人ではなく求愛だったと、わたしは今でも思うのです。 わたしにはボーリンという恋人がいました。病弱でとても気の弱い、聡明な文学少女です。同じく読書家で体の弱かったわたしは、彼女と共に創作の道に進むことを約束しました。趣味や思考や夢までも、二人は共有していたのです。 けれども同性愛への偏見や軽蔑が根強く残る時代のこと。二人の関係を知るものはみな口を揃えて「不潔」とひどく罵りました。 カンタベリー大学の学長だったわたしの父は、他の誰よりもボーリンとの交際を反対していました。必死になって手に入れた地位や名誉に、傷がつくことを恐れたのです。 父はボーリンの母親と手を組んで、わたしを南アフリカに移住させようと企みました。
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