D.E.

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ポーラはアメリカ生まれのアメリカ育ち。大財閥の一人娘で父から先月遺産を受け継いだばかりだ。 別の言い方をすると先月父親がなくなったわけだ。 ポーラは絶望していた。父がなくなったせいでも遺産をくすねようとする親戚と騙るやからのせいでもない。 ポーラは白血病だった。ドナーもいっこうに見つからない。父が生前外国まで見つけようとしたが結局見つからなかった。 だがポーラが絶望しているのは自らの病にでもない。ポーラはアメリカに、アメリカの現状に絶望していたのだ。 2207年、アメリカの政策は限界点に達していた。国内だけでも失業、保険、格差社会etc。国外ではテロリズムがはびこり、アメリカは世界中で嫌われモノになっていたのだ。 核保有国もいまや20ヵ国を超え、遺伝子工学の発達によるアメリカの開発したバイオ兵器の拡散も水面下では進んでいると見られていた。 ポーラは格差社会にうんざりしていた。一番の親友はジョンという男の子でスラム街育ち。たまたま知り合って父に隠れて遊んでいた。 あるとき父にばれてジョンがスラム街育ちというだけでポーラはジョンから引き離された。 父は亡くなったがジョンの居場所はもうわからない。いつかこんなアメリカを変えたい。 だが23世紀になっても白血病は骨髄移植以外に治療法がなくポーラの命はつきようとしていた。 2207年夏、ポーラに突然の知らせが入った。 ポーラの受け継いだ遺産に病院グループもあったが、その病院グループではポーラだけの為に患者を勝手にドナー登録していた。 ポーラの父が画策したことでありもちろんポーラは知らない。 その病院グループの一つからポーラに適格なドナーが見つかったというのだ。 ポーラは父の画策に怒りを覚えたがドナーが見つかったのはうれしい。 怒りを覚える反面、うれしい、そんな自分にポーラは吐き気を覚えた。
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