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ジャリッと砂を踏むような音がして、同時に足の裏に鋭い痛みがいくつも走る。
壊れた時計の破片を踏みしめ。
何も考えずに全力で。
「るう」
僕はナキさんを抱きしめていた。
夜の「彼女」を。
腕の中のナキさんは柔らかく甘い匂いがして、そしてやっぱりひどく冷たかった。
「・・・嫌いなの」
さっきまでとはうって変わって、弱々しい声でナキさんが呟いた。その表情を、僕は見る事ができない。
僕は思う。
「でも」
例え、そのどちらが本当の「彼女」―ナキさんだとしても、僕はたぶん。
「どこにも行かないで」
必要とされているのだ。
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