その壱

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何気ない日常のひとコマ、静かな夕食の時間に、突如としてその言葉がお母さんの口から飛び出した。 「礼芽(あやめ)……恩賀崎(おんがざき)家本家へ行ってちょうだい。…『男』として」 「ぶふう!!??」 私は、食べていた夕飯を盛大に吹き出す。 「ちょっ、なによ礼芽!!汚いなー」 顔をしかめて言うお母さん。 「ご、ごめ…じゃなくて!!」 私は吹き出した夕飯に構わず、身をのりだした。 「どういうこと!!??ぜんっぜん意味がわかんないんだけど!!!!」 お母さんはものすごい剣幕でまくしたてる私に物怖じしたのだか、途端に小さくなった。 「礼芽…怒らない??」 「いや、怒る」 「じゃあ話せないーっ」 言って逃げようとするお母さんの襟首を素早く掴む。 「わわわ!!くっ首っ!!!!苦しっ………礼芽っ」 悶えるお母さんに、私は最上級の笑顔で言った。 「じゃあ話してくれるよね??」 「……はい」
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