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裕貴の通う大学は、言ってしまえばどこにでもある、よくある大学の外観をしていた。
敷地内の道の端々には木が植えられ、木漏れ日がきらきら道に降り注いでいる。
まあ、今は夏だからぎらぎら、っていう方が正しいかもしれない。
でも、私たちの通る日陰を気持ちのいい風が吹き抜けているため、あまり暑さは感じなかった。
いくつかの建物をすたすたと通り過ぎていく裕貴のあとを必死で追う。
それにしても。
なんだ、このところどころから突き刺さる視線は。
いや、もちろん理由はわかってるんだけど。
視線の先を追い、私と目が合ったとたんぱっと目をそらす女の子たち。
別の視線の先にも女の子。
さらに別の視線の先にも女の子。
「はあー……」
思わずため息をもらす私の方へ、裕貴が振り返る。
「どうした、もう疲れたのか」
「いや、世も末だと思って…」
まあ、たしかに裕貴は外見だけは抜群だけど。
でも……
「意味わかんねぇこと言う口は塞いでやろーか」
「ぎゃーっ!!!!」
私のあごを持ち上げ、そうのたまった裕貴から、私は慌ててとびずさった。
こんな奴がモテるなんて、信じらんないっ!!!!!!
「私一人で見て回るから!!じゃあね!!!!」
これ以上裕貴のセクハラとこの視線には耐えられない。
言って私は裕貴の返事も待たず、裕貴と反対方向へ駆け出した。
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